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朝のワイドショー番組で「今朝のおめざ」だったかな、お菓子を紹介するコーナーがある。
私は酒の肴には目がないが、甘いものには無関心。
気になったのは「おめざ」という言葉である。

父が交通事故で亡くなった後、母は姉と私をつれて実家に戻った。
母の実家は祖父、叔父の家族、祖父のお弟子さん(何人くらいいたのか思い出せない)、とにかく大人が大勢いる家だった。
仕事に出かけるとき、インパネスを着た祖父が、玄関でお弟子さんの差し出す中折れをかぶる仕草を、どうしたわけか今でも覚えている。
祖父が玄関をでるとき、家中の者がずらりと並んで「いってらっしゃいませ」と大袈裟なことをするのだが、身体が弱く陰気な子供だった私は大抵列の隅っこにいた。
祖父の機嫌が良いときに限っただろうが、祖父は私を「こっちにおいで」と呼んで、私の手指をコップ形に握らせた。
「お土産みっつ、たこみっつ」
祖父は歌うように言いながら、大きな人差し指でその小さなコップの口をつつく。
陰気な子供は照れくさくて嬉しくて、くすぐったくて首をすくめると、大きな祖父からは仁丹の匂いがした。

朝、目がさめると一番にすることは、枕元をさぐることだった。
指先にカサリとした紙の感触があると、「しめた!」
飛び起きてみるとそこに「おめさ」がある。
「おめさ」は枕元に置いてある、半紙に包まれたお菓子のこと。
「おめさ」を食べるときだけは寝間でも良いとされていて、布団に入ったままお菓子を頬張ることは、子供にとって無礼講を許されたひと時なのだった。
半紙の中身はなんだったかな、「おかき」や「あられ」などのありふれた干菓子だったと思うが、お行儀の悪いことを許されているという開放感のせいか、わくわくするほど美味しかった。

広辞苑で調べてみると、「おめざ=子供が目をさましたときに与えるお菓子の類」とある。
「おめさ」がないところをみると、「おめざ」が正しいのだろうが、祖父が半紙に包んでくれたお菓子(きっと宴会の残りものだったろう)は、家内に限り「おめさ」と言うことになっている。

寝入った子供の枕元にお菓子をそっと置いていく昭和30年代のサンタクロースは、インパネスを着て、時を構わずやってきたのだった。

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【2006/11/26 23:17】 | 未分類 トラックバック(0) |
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