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秋の日は釣瓶落し。
一頃よりは寂しくなった虫の音を聴きながら台所に立つと、気持ちがしんとする。
盛大に水道の水を流して食器を洗っても、小気味よくお葱をきざんでも、気持ちの隅っこがしんとしている。

11年前に逝った母を思い出していた。

最後の闘病となった病室で、主治医の診察を受けに行く際に、赤の「ひっぱり」を羽織っていきたいと母が言いだした。
こんな病人くさいガーゼの着物だけでは、気持ちが滅入るというのである。
私は、「60半ばをすぎた老女が、赤いものなんかを着て」と母がバカにされるではないかと心配したが、母の余命を考え、希望どおりにした。
母を車椅子に乗せて診察室に入ると、
「ほぉ、赤い着物ですか」
初老の主治医が、ちょっと驚いたように言う。
やっぱり…、重病人の老人に「赤」?と思われたのではなかろうかと、背中がひやりとした。
しかし、母はにっこりと頷いて
「はい、先生」
両袖口をつまんで、そのまま腕をぴんと張り、ちょうど奴さんだよの格好をとって
「ちょっと色っぽいでしょ?」と首をかしげた。
先生は豪快に笑って、「そうそう、その意気ですよ。がんばりましょうね」と
母を励ましてくださったのだった。
母は膵臓ガンの末期で、その激痛に耐えていたころのことである。

辛かったはずやのに
漫才師とはいえ、そんなにまでして笑いをとることなかったのに

台所の後片付けが終わっても、今宵はやるせなくて仕方ない
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【2006/09/29 23:40】 | 未分類 トラックバック(0) |
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