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今日、髪を染めた。
といっても、若いお嬢さんたちのようなお洒落染めではなく、色気のないことに白髪染めである。
母が亡くなってから10年あまり、毎月一人で染めてきたので、手馴れたものだ。

母は商売柄、髪には気を使っていた。
「毎日の鬱陶しいこと忘れて笑いたいと思て、お客さんは来てくれてはるのに、所帯くさい格好では舞台に立たれへん」というのが理由らしかった。
その芸人魂は解らなくもないが、二週間毎に「髪を染めてくれへんか」と私に頼んでくるのである。
その頃の私といえば、家事育児、おまけにフルタイムのパートに出ていて、目の回るような忙しさだったから、いつもいつも二つ返事というわけにはいかない。
「あんたの手が空くまで待ってるから」
母はそう言って、洗面所の脇に卓上用の鏡を置き、肩にケープを巻いて、これみよがしに忙しそうに振舞う私がやってくるのをじっと待っていた。

食事の支度が一段落してやってきた私に、母は「ごめんな」と言い、素直に髪を託した。
60を過ぎた母の髪はすすけて、毛染めの薬剤に耐えるには、あまりにも頼りなかった。
薬剤が髪よりも頭皮に浸透するようで、刷毛で塗りつける手が躊躇いがちになる。
母の髪を全部染め上げても、毛染めの薬剤は半分以上、付属の白いトレーに残っていた。


母が幼い娘の髪を結う、その遠い記憶にある時間と、娘が年老いた母の髪を染める間に流れる時間には同じ匂いと温度がある。
甘く満ち足りて、そのくせ二人だけの内緒話がしたくなる妖しさがある。
髪を結う、髪を染める、そんな女の健気な悪戯心を母と娘は共有したかったのではないか。
今宵、一人で髪の染め具合を鏡で確かめて、単独犯であることを侘しく思う。





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【2006/11/06 00:09】 | 未分類 トラックバック(0) |

こんばんは。
ゆう
素敵なお母様ですね。
舞台を観る事ができないのが、残念です。
心が温かくなるエピソードで、私も母に甘えてばかりいないで、
親孝行せねばと思いました。


senju
ゆうさん、こんばんは。
過分のお言葉、母が照れてしまいます。
母と娘って、面白いものですね。
甘えたり甘えられたり、喧嘩をした思えば、親友以上に仲良かったり。
まぁさんとゆうさんが仲よく、いつまでも幸せであることが、一番の親孝行だと思います。

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コメント
この記事へのコメント
こんばんは。
素敵なお母様ですね。
舞台を観る事ができないのが、残念です。
心が温かくなるエピソードで、私も母に甘えてばかりいないで、
親孝行せねばと思いました。
2006/11/06(Mon) 22:32 | URL  | ゆう #-[ 編集]
ゆうさん、こんばんは。
過分のお言葉、母が照れてしまいます。
母と娘って、面白いものですね。
甘えたり甘えられたり、喧嘩をした思えば、親友以上に仲良かったり。
まぁさんとゆうさんが仲よく、いつまでも幸せであることが、一番の親孝行だと思います。
2006/11/07(Tue) 21:24 | URL  | senju #-[ 編集]
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